忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜
「その色いいじゃん。唯香の白い肌がよく映える」
「……スタッフさんも同じことを言ってました」
「おぉ、さすが」
スタイリングしてもらったのは、デコルテがよく見えるタイプのネイビーのドレスだ。合わせてもらった小さいストーンが揺れるピアスが華奢でとても綺麗。
こんなお洒落な格好をしたのは、傑くんの結婚式以来かもしれない。
「可愛いよ、唯香」
「っ、からかわないでくださいっ」
「フッ……、からかってねぇよ。本心です」
恥ずかしくてすぐに顔を背けたけれど、ストレートに褒められて悪い気はしない。
そのまま嬉しそうな天音にエスコートされて、再び車に乗りこんだ。
しばらくして着いたのは、銀座の一頭地にあるビル。その七階と八階にある、そういう情報に疎い私でも知っている高級フレンチのお店。
確か、ミシュランで三つ星に輝いたとニュースにもなっていた、今話題のお店だ。
店内は温かみのある白やゴールド、ブロンズを基調としており、中央には大きな円を描く吹き抜けがあるよう。その周りにはソファとテーブルがいくつか置かれている。
その横を通り、吹き抜けの向こうにある階段を一段ずつゆっくりと降りていく。
するとその下の階には、白いテーブルと丸みのあるソファのような椅子。吹き抜けの天井から吊り下がるシャンデリア。そこから柔らかな光が差し込み、シンプルながら滑らかな曲線美がお店全体に広がっていた。
至る所に置かれているアート作品も主張しすぎず、他には無いラグジュアリーで魅力的な空間を醸し出している。
「……綺麗」
「いいところだろ、ここ」
「はい。とても素敵です」
お店全体が見える端の席に案内され、そこに腰掛けると執事のような燕尾服に身を包んだ男性が歩いてきた。
「本日はご来店、誠にありがとうございます。当店の総支配人の相原と申します」
総支配人という単語に恐れ慄いているうちに、なんてことない顔をした天音は笑顔で対応している。
総支配人がわざわざ挨拶に来るって、天音って、一体何者なの!?
「じゃあそれで。それから伝えておいたワインもお願いします」
「かしこまりました」
どうやらコース料理を予約してくれていたらしい。