忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜
「天音は?子どもは好きですか?」
「どうだろうな……あんま考えたことないかも。俺、弟いるけど歳近いからさ。小さい子の扱いがまったくわかんねぇ」
「へぇ、弟さんいらっしゃるんですか。知らなかった。でもそれを言うなら、私は一人っ子なのでもっとわかりませんよ。でもやっぱり自分の子どもは格別に可愛いんだろうなあって、梨香子さんの顔見てたら思いました。もう。幸せいっぱいって感じで、見てるこっちが幸せ分けてもらった気がします」
「よかったな」
「はい」
微笑む天音に話を聞くと、どうやらついさっき仕事をあがったばかりらしく、夕食がまだらしい。
私も仕事終わりに急いで来たからまだ食べていない。言われてみればお腹が空いてきた。
「ついでにどこか寄ってくか」
「いいんですか?」
「あぁ。どうせ家帰っても暇だしな。久しぶりに明日がオフだから、ちょうど唯香に連絡しようと思ってたんだ」
ふわりとした笑顔に少しときめく。
そんな貴重なお休みの前に、私を誘おうとしてくれていた。
それが、何故だか嬉しかった。
「どうせなら飲みに行くか」
「でも、車……」
「代行頼むから大丈夫」
さて、どこに行こうか。と考えている天音に、
「それなら軽く!本当に軽いところでお願いします……」
「腹減ってんじゃねぇの?」
「いや、まぁそれなりに減ってはいるんですけど……」
だからって、またあんな高級店に連れて行かれちゃ私のメンタルが持たない。
必死な私を見て天音は首を傾げていたものの、駅に車を止めてから、私の要望通り軽食と豊富なアルコールが売りの駅前のバルに入ってくれた。