忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜
ホットミルクを飲み終わった後、私は天音に促されてあの寝室のベッドで横になっていた。
サラサラのシーツはどうやらシルク素材のようで、やはりとても滑らかで気持ち良い。
しかしここにいると、どうしても先程のキスを思い出してしまう。
一人で赤面している姿など誰にも見せられない。なんて恥ずかしいんだ。
当たり前だがこの家にはベッドがこれしかなく、泊まらせてもらうだけでも申し訳ないのに天音に"唯香はちゃんとベッドで寝ろ"と言われてしまい、もしソファが借りられればと思っていた私はあっけなく玉砕した。
私が気を遣わないように、と天音は今シャワーに入っている。その間に寝ていろということなのだろう。
時間ももう遅いし、今日は天音の言葉に甘えさせてもらおうと思う。
布団に入ると、天音の香りが私の全身を包み込む。
天音の服を着た時も思ったけれど、まるで天音に優しく抱きしめられているかのよう。
それが恥ずかしいのに、なのにどうしてか、とても落ち着いてしまう。
いつのまにかその香りを求めて、布団をギュッと抱きしめるようにしているうちに段々と瞼が重くなっていき。
そしてそのまま深い眠りに落ちる。
――――十分ほどした後。
「……んな可愛いことすんなって。抱き着くんなら俺に抱き着けよ」
そんな、シャワー上がりの天音の声は、寝てしまった私には届いていなかった。