忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜
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「……ん……」
ふと、意識が浮上して瞼を手で擦る。
夢も見ずに深く眠っていたらしく、目覚めはすこぶる良かった。
ゆっくりと目を開くと、白い天井が目に入る。
ボーッとそれを少し眺めているうちに記憶が蘇ってきた。
そういえば昨夜は天音の家に泊まったんだった。そう思って起きようと両手を上げて伸びをしようとした。
「……!?」
左手に何かが当たった。驚いてそちらに顔を向けると、そこには静かに寝息を立てる天音の姿。
思わず声を上げそうになったのを、グッと堪えて口元を両手で塞ぐ。
どうやら私の隣で寝ていたらしい天音。彼は私の手が当たっても全く起きる気配がなく、気持ち良さそうに眠っている。
しばらく息を殺しながら、その寝顔を眺めていた。
「……そりゃあ、疲れるよね」
毎日たくさんの患者さんを救っているであろう天音の疲れは私の何倍もあるだろう。
VIPを対応するプレッシャーもあるだろう。でも、それ以上にドクターというプライドもあるはず。
その心労は図りきれない。
睡眠の質を上げたい。そう思うのも無理はない。
「……毎日お疲れ様です」
サラサラの髪の毛を手で撫でる。
少しだけ眉を顰めたけれど、ゆっくりと頭を撫でているうちに次第に子どものような穏やかな寝顔に戻った。