忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜
「――それ、もう好きなんじゃないの?」
生ビールのジョッキを煽るように飲む侑芽は、何を分かりきったことをとでも言いたげだ。
「……え?好き?」
私はそんな侑芽をポカンと見つめてしまう。
「うん。もう恋じゃん」
「恋……」
言葉を噛み砕くように発すると、次第に頭の中に"恋"という文字と"好き"という文字が踊り始める。
確かに三年前、一度天音とは身体の関係を持った。でもその一度きりだ。
再会してからまだ日も浅いし、キス……はされたけど、まさか好きだなんて、そんな……。
思いがけない単語に私は思考停止してしまい、目の前で侑芽がひらひらと手を上下に動かしているのをジッと見つめていた。
「おーい」
私が返事をしないから、さすがに心配してくれたのか肩を揺すられる。それにハッと正気を取り戻すと、侑芽は安心したようにまたビールを口に運んだ。
「……私、恋、してるのかな」
「私にはそう見えるけどね」
恋、か。
「それに、相手の人も何とも思ってなかったらわざわざ泊めてあげたりしないと思うけど。そこらのビジネスホテルにぶち込めばいいだけだもん」
「ぶち込むって……」
「まぁそれは例え話だけど。でも、私が男なら好きでもない相手なら尚のことそうすると思う。勘違いされたら困るもん」
「それは……」
確かに。そうかもしれない。
「大体、キスに応えた時点で唯香はその人に好意があるでしょ。あんた、好きでもない男とキスできるの?」
「……無理、だと思う」
「でしょー?だから唯香は、その人のことが好きなんだよ」
侑芽はそう言ってクリームチーズをつまむ。
ぐるぐると、頭の中で忙しなく様々な感情が動く。