忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜
「……本当は、今日はこれをプレゼントしようと思ってたんだ」
「え?」
柔らかな笑顔で差し出されたのは、小さな袋。
「唯香に似合うと思って」
開けてみて、と言われて受け取ると、中にはラッピングされた綺麗な箱が。
取り出して開けると、華奢なデザインのピアスが輝いていた。
「これ……」
「人と被るのは俺が嫌だから、しばらく悩んで決めるのに時間かかっちまった。……それ、どう?」
「……すっごく、素敵です。本当にこれを私に……?」
「もちろん。唯香を思って選んだから、付けてもらえると嬉しい」
「……ありがとうございます。本当に嬉しいです」
「そりゃあ良かった」
天音はそのまま私の手から箱ごとピアスを取り、そっと取り出して私の耳に付けてくれる。
耳朶に触れる天音の手が、すごく冷たくて。
天音も緊張しているのがよくわかる。
「……うん。似合ってる。可愛いよ」
「っ……」
じっと見つめられて、その綺麗な瞳に吸い込まれてしまいそうになる。
ふわりと微笑んだ天音に、心臓がギュッと鷲掴みにされたように痛み、しばらく大きな音を立てる。
そして天音は急に真顔に戻ったかと思うと、再び緊張した面持ちで色気を放つ。
「……なぁ。唯香。明日仕事は?」
明日は、土曜日。
「……や、すみ。ですけど……」
「良かった。……今日と明日。唯香の時間、俺にくれないか?」
私の両手を包み込むようにして、懇願する。
その表情があまりにも妖艶で、直視できなくて目を逸らしたいのに、囚われてしまったかのように逸らせない。
その言葉の意味がわからないほど子どもではない。
ゴクリと喉を鳴らしてから、誘われるようにゆっくりと頷いた。