忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜



「唯香ちゃんがこんなに小さい頃から知ってるから、結婚って考えるとまだ信じられない」


「まだ付き合い始めたばかりですから。私もまだ先のことは全然」


「お母さんには?もう伝えたの?」


「はい。同棲するならさすがに言わないとなって思って。引越し前に報告しました」



天音との交際の報告も兼ねて久し振りに実家に行った時。


お母さんが口をあんぐり開けて驚いていたのを思い出して小さく笑う。


そりゃあ驚くよね。傑くんが親戚の中で唯一頭角を表しただけで、私はただの一般人。普通のOLだ。


それが有名病院のドクターで、しかも院長の息子で、いずれ娘の働く企業のグループ会社のトップになる人物だ。その人と結婚前提で付き合い始めただなんて。加えて天音は超がつくほどの美形だ。お母さんが固まるのも無理は無かった。


その足で天音の実家にも出向き、目を見張るほどの豪邸と煌びやかな内装に今度は私が口をあんぐり開ける番だった。


初めてお会いした院長夫妻は、ぽっと出の私にもとても優しくしてくれて、


"天音は今まで浮いた話も無く、唯香さんが初めて紹介してくれた女性なんだ。末永く、息子をよろしくお願いします"


と逆に頭を下げられてしまい、私が恐縮しっぱなしだった。


どうやら天音はご両親に私と結婚すると宣言していたらしく、"式はいつだ?""結納はどうするの?"とどんどん話が進んでいて、天音はそれを適当にあしらっていて私がどぎまぎしていた。


"早く孫の顔が見たい"と言われた時には動揺してしまったものの、どうやら私はいつのまにか、お二人に"天音の婚約者"として無事に認めてもらえたらしい。


終始緊張していたものの、そうして天音のご両親との初対面を終えたのだった。

< 80 / 86 >

この作品をシェア

pagetop