置き去りにされた花嫁をこの手で幸せに
翌日、またエントランスを抜けるのが不安になるがこれだけは逃げられない。
明日からは沖縄だから今日だけ頑張ればなんとかなると自分を奮い立たせた。

駅を出ると思い足を引きずるように歩き始めた。
すると後ろから声がかかり、振り返ると加賀美くんがいた。

「おい、槇村。おはよう」

「あ、加賀美くん。おはよう」

加賀美くんと歩き始めると不思議と不安が消え、いつもと同じように会社に向かうことができた。

エントランスを抜ける時もさらっと立ち位置を変え、私を壁際にしてくれた。みんなからの視線を遮ってくれた。

間違いない。
昨日と同じだ。
加賀美くんは私を守ってくれてるんだと思った。

小さな声で「ありがとう」というが聞こえないのか返事はない。
それでもいい。
私は加賀美くんを見直した。
こんな気配りしてくれる人だなんて知らなかった。

企画戦略室に着くとお互いの席に着席し黙々と仕事を始めた。 
私は昨日やり途中だった調査を始めた。
リノベーションするにあたり様々な業者の介入が必要となるのでその選定も考えていかなければならない。
半年なんてあっという間かもしれない。
明日沖縄に行き、現地を見るのが楽しみで仕方ない。

「加賀美くん。チケットとホテルの手配してない!」

私はふと気がつき慌てて加賀美くんに声をかけた。

「大丈夫。槇村が休んでる間に押さえておいた。部長から復帰する連絡もらってたからさ」

「ごめんね。ありがとう」

「明日は9時20分発だからな」

「分かった」

相変わらずの卒がない仕事ぶりに安定の安心感がある。

資料を読み込んでいるとあっという間にお昼になってしまった。
今日はさとかと約束していないし、食堂にも行きたくないからコンビニでおにぎりを買ってきた。でも飲み物だけは自動販売機に買いに行こうと立ち上がった。
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