置き去りにされた花嫁をこの手で幸せに
「あ……ほら。あの人」
小さな声で噂する声が漏れ聞こえてきた。
企画戦略室を一歩出た途端みんなからの視線を感じ、滅入ってきた。
ここから出ないで済むように何か買ってくればよかった、そう後悔していると後ろから田代さんが声をかけてきた。
「槇村、何か買う?」
「冷たいコーヒーとお茶を」
そういうと田代さんはついてきてくれ、自動販売機で買ってくれた。私がお金を払おうとしても「たまには奢られておけ」と受け取ってくれなかった。
田代さんは私より2つ上の先輩だが気さくで、加賀美くんとの衝突を諌めたりしてくれるとてもいい先輩。後輩の面倒見も良く時々飲みに連れ出してくれ、愚痴も聞いてくれる。私は一時期田代さんに恋心を抱いたこともあった。でも彼は誰にでも優しくて私だけに親切なわけではなかったんだと思い冷めてしまった。でも恋心はなくても好きな先輩だし、頼りにもしている。今はお兄さん的な存在。
「お前も色々大変だったな。でもここからどれだけ頑張れるかがお前の力の見せ所だぞ。俺はお前の強さを知ってるからな。頑張れよ。でも困ったらいつでも相談してくれよ。一人で悩むんじゃないからな。俺はお前の味方だから」
「ありがとうございます。田代さんに言われると力が湧いてきます。まさかこんなことになるなんて思ってもみなかったんですけどね……アハハ」
「空元気はいらない。無理して笑うなよ」
そういうと私の頭をガシガシとかき混ぜてきた。
「田代さん!ぐしゃぐしゃになっちゃいましたよ」
「そうそう。その意気だ!槇村のいいところが消えてなくてよかったよ。お前らしさが消えたらダメだ。お前はお前のままが一番いいんだからな」
「はい」
私たちは一緒に部署まで戻り分かれて自席についた。
田代さんに買ってもらったコーヒーを開け飲み始めると加賀美くんがどこからか戻ってきた。
「お前ここで食事なの?外にいく?俺今から行くけど」
「ううん。おにぎりあるから大丈夫。行ってきて。早くしないと終わっちゃうよ」
「そうだな。じゃ、行ってくるわ」
「いってらっしゃい」
私は加賀美くんを見送るとおにぎりを食べ始めた。
パソコンを見ながらの食事は進まないし味気ないけれどさっきみたいにコソコソと噂をされ針のむしろの中で食堂に行くだけの勇気はない。
私は悪くないのに人からは指を指されなければならないの?
そうは思うけど他人は人の噂が楽しいだけなんだから私が何か言ったらさらに噂が大きくなるだけだろう。
人の噂も七十五日。
昔の人はそう言ってた。
だからそのうち風化する。それを静かに待とう。
はぁ……
なんとなく大きなため息が出てしまった。
お腹の底から息を吐き出したら少し浄化される気がして大袈裟なほどに大きなため息だった。
「おい、すごいため息だな」
「あれ?加賀美くん?お昼に行ったんじゃないの?」
「いや、コンビニ。たしかに時間が遅くなってきてたから外行くのキツイかと思ってさ。ほら、お土産」
袋から取り出し渡されたのは冷えたフルーツカップだった。
「ありがとう。冷えてて美味しそう」
「さっさと食べちゃえよ。他の奴らに見られたらみんなに俺がたかられるから」
「大丈夫だよ。加賀美くんからもらったなんて書いてないんだから」
おかしくなってつい笑ってしまった。
誰にでも優しい加賀美くんでもそんなこと考えてるんだな。やっぱり私の前だと少し腹黒いところが見え隠れする。
「うるさいな。さっさと食べとけって」
加賀美くんも自席に戻り袋をガサガサ開けておにぎりを食べ始めた。
食欲があまりなかった私はおにぎり1個がやっとだったのでフルーツカップはありがたかった。パイナップルやグレープフルーツ、桃の入ったカップはとても美味しくてぺろりと食べてしまった。
糖分が入り、身体が少し和らいだ。
力が抜けた、というか甘いものに癒されたというか、ちょっと張り詰めた神経が緩んだ。
小さな声で噂する声が漏れ聞こえてきた。
企画戦略室を一歩出た途端みんなからの視線を感じ、滅入ってきた。
ここから出ないで済むように何か買ってくればよかった、そう後悔していると後ろから田代さんが声をかけてきた。
「槇村、何か買う?」
「冷たいコーヒーとお茶を」
そういうと田代さんはついてきてくれ、自動販売機で買ってくれた。私がお金を払おうとしても「たまには奢られておけ」と受け取ってくれなかった。
田代さんは私より2つ上の先輩だが気さくで、加賀美くんとの衝突を諌めたりしてくれるとてもいい先輩。後輩の面倒見も良く時々飲みに連れ出してくれ、愚痴も聞いてくれる。私は一時期田代さんに恋心を抱いたこともあった。でも彼は誰にでも優しくて私だけに親切なわけではなかったんだと思い冷めてしまった。でも恋心はなくても好きな先輩だし、頼りにもしている。今はお兄さん的な存在。
「お前も色々大変だったな。でもここからどれだけ頑張れるかがお前の力の見せ所だぞ。俺はお前の強さを知ってるからな。頑張れよ。でも困ったらいつでも相談してくれよ。一人で悩むんじゃないからな。俺はお前の味方だから」
「ありがとうございます。田代さんに言われると力が湧いてきます。まさかこんなことになるなんて思ってもみなかったんですけどね……アハハ」
「空元気はいらない。無理して笑うなよ」
そういうと私の頭をガシガシとかき混ぜてきた。
「田代さん!ぐしゃぐしゃになっちゃいましたよ」
「そうそう。その意気だ!槇村のいいところが消えてなくてよかったよ。お前らしさが消えたらダメだ。お前はお前のままが一番いいんだからな」
「はい」
私たちは一緒に部署まで戻り分かれて自席についた。
田代さんに買ってもらったコーヒーを開け飲み始めると加賀美くんがどこからか戻ってきた。
「お前ここで食事なの?外にいく?俺今から行くけど」
「ううん。おにぎりあるから大丈夫。行ってきて。早くしないと終わっちゃうよ」
「そうだな。じゃ、行ってくるわ」
「いってらっしゃい」
私は加賀美くんを見送るとおにぎりを食べ始めた。
パソコンを見ながらの食事は進まないし味気ないけれどさっきみたいにコソコソと噂をされ針のむしろの中で食堂に行くだけの勇気はない。
私は悪くないのに人からは指を指されなければならないの?
そうは思うけど他人は人の噂が楽しいだけなんだから私が何か言ったらさらに噂が大きくなるだけだろう。
人の噂も七十五日。
昔の人はそう言ってた。
だからそのうち風化する。それを静かに待とう。
はぁ……
なんとなく大きなため息が出てしまった。
お腹の底から息を吐き出したら少し浄化される気がして大袈裟なほどに大きなため息だった。
「おい、すごいため息だな」
「あれ?加賀美くん?お昼に行ったんじゃないの?」
「いや、コンビニ。たしかに時間が遅くなってきてたから外行くのキツイかと思ってさ。ほら、お土産」
袋から取り出し渡されたのは冷えたフルーツカップだった。
「ありがとう。冷えてて美味しそう」
「さっさと食べちゃえよ。他の奴らに見られたらみんなに俺がたかられるから」
「大丈夫だよ。加賀美くんからもらったなんて書いてないんだから」
おかしくなってつい笑ってしまった。
誰にでも優しい加賀美くんでもそんなこと考えてるんだな。やっぱり私の前だと少し腹黒いところが見え隠れする。
「うるさいな。さっさと食べとけって」
加賀美くんも自席に戻り袋をガサガサ開けておにぎりを食べ始めた。
食欲があまりなかった私はおにぎり1個がやっとだったのでフルーツカップはありがたかった。パイナップルやグレープフルーツ、桃の入ったカップはとても美味しくてぺろりと食べてしまった。
糖分が入り、身体が少し和らいだ。
力が抜けた、というか甘いものに癒されたというか、ちょっと張り詰めた神経が緩んだ。