置き去りにされた花嫁をこの手で幸せに
私はスマホを取り出したが悠介からの電話もメッセージもきていなかった。

私が履歴から悠介の番号を押すが電源が入っていないというアナウンスだけが無常にも流れている。
何度もかけ直すが繋がることはなかった。

「悠介からは何と連絡があったんですか?」

「悠介からは、その…、女性を妊娠させたと。その人と結婚したいから今日の式はあげられないからと」

「それだけですか?」

「はい。私たちから奈々美さんには伝えて欲しいとだけ」

「そうですか」

声は震え、涙は頬を伝うが今日の式をどうしたらいいのか狼狽えてしまった。

あと15分で始まる予定のはずだった結婚式。
参列者は記帳を済ませチャペルに入っているだろう。

考えれば考えるほどにガタガタと手が震える。

もう死にたい。

そんな短絡的な考えが脳裏をかすめる。

「大丈夫だ、奈々美。大丈夫だよ」  

見るに見かねて父は私の背中をさするが私の息はどんどんと荒くなっていく。

息が吸えない…
呼吸はどんどん荒くなっていく。
胸が苦しい。
徐々に手が痺れてきてさらに私の不安を煽ってきた。

「奈々美、大丈夫だから。ゆっくり呼吸するのよ。フーッと息を吐き切って、また吸って。ほらゆっくりまた吐き切るのよ」

母の声に頷くがうまくいかない。
苦しさは増すばかり。

私を宥めようと両親は寄り添うが私は息が吸えない苦しさや、何より裏切られたことに深く傷つけられた。ウエディングドレスを見に纏う自分の愚かさに身が引きちぎられそうな思いだった。

そのまま私の意識は薄れていった。
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