置き去りにされた花嫁をこの手で幸せに
加賀美くんがお風呂から出てくるとTシャツに短パンと私と同じ姿なのにドキドキが止まらない。
いつも髪の毛を上げているがシャンプーした今は下りていていつもより若く見える。
タオルでゴシゴシと髪を拭いているだけなのになぜこんなに色気を醸し出すのだろう。
私はどこを見ていいか視線が定まらない。

「あ、ビールでも飲む?冷蔵庫に入ってたよ」

「そうだな」

私は立ち上がりビールを2本とバッグからお菓子を取り出してきた。
私が夜のおやつに、と思い買っておいたものだ。
ビールを手渡すと2人でプルタブを開け乾杯をした。

「あーうまい。今日はよく動いたもんな」

「楽しかったけど疲れたね。2泊3日って以外とバタバタかもね。みんなこのくらいの日数になるのが定番だけどなかなかのペースだよね」

「あぁ。正直結構キツイな。もう1日あれば楽だと思うけど普通はそうもいかないよな。この日数で夫婦の時間なり、癒しの時間なりを確保したいとなるとスケジュールがタイトになるな」

「やりたいこともみたいものも沢山ある魅力的な島だもんね」

「これから色々練っていかないといけないな」

私もこれからのことを考えるとワクワクしてくる。
良かった、仕事していると気がまぎれる。
今回の大きなプロジェクトに関われて良かった。自分の全身全霊をかけて成功させたい。

「なぁ、このお菓子ってどうしたの?」

「今日の夜用におやつを買っておいたの。さっきコンビニで見つけたんだけど東京で見かけないものばかりをとりあえず買ってみた。味見してみようよ」

「お前は相変わらずお菓子が好きだな」

「甘いものは神だからね。でもさ、加賀美くんはシェアするの苦手って言ってたよね。先にお皿に載せてあげたら食べられる?半分こにしないといけないのは加賀美くんが切ってくれる?私は加賀美くんが切ってくれたもの食べられるからさ」

「いや、苦手な人とそうでない人がいるっていうか……。正直ぐいぐい来られるのが苦手だから色々理由を付けてることもあるんだ」

「大変だね、モテる人は」

「槇村は気にならないからこのままでいいよ。別に潔癖なわけじゃないから」

そういうとポテトチップをあけて食べ始めた。
加賀美くんは何も言わずにいたら顔もいいし、普通の人には優しいもんね。仕事もできるし有望株。女子社員も適齢期の人は気になる存在なんだろうな。
私からすると口うるさいからそういう目で見たことなかったけど、破断した後から気を遣ってくれているのか加賀美くんが優しくなった気がするし、口とは別でさりげないフォローが今の私の身に染みているのは現実だ。
女子社員は早くからそういうところに気がついていたんだろうなぁ。
苦笑いをしながらビールとおやつを食べ、いつのまにかそのまま寝てしまった。
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