置き去りにされた花嫁をこの手で幸せに
慌てる
駅でいつもと同じように槇村を待つ。
すると山口が改札から出てきた。
「加賀美さん、おはようございます。槇村さんを待ってるんですか?俺が一緒に行くんで大丈夫ですよ。俺が待ちますよ」
「あ、あぁ。でも俺が毎日一緒に行ってるから待つよ」
「大丈夫ですよ。俺が付き添いますから心配ないですよ」
どちらがここで待って会社まで一緒に行くか押し問答していたなんて私は全く気が付かず、改札から出ると2人が一緒にいたことに驚いた。
「おはよ。珍しいね。2人一緒の時間だなんて」
「あぁ、たまたまな」
「槇村さん、おはようございます。昨日早速アレで飲んじゃいました」
「本当?良かった、選んで。使ってくれるなら嬉しい。私は流石に会社では使えないからプライベート用にさせてもらうね」
「はい。好きな時に使ってください。でも絶対似合いそう」
歩きながら話し始める私たちの後ろを加賀美くんがついてくる形になってしまった。
加賀美くんからの視線を背中に受け、なんとなく居心地も空気も悪い。
土日の電話は私のことを心配してくれていたのに今は怒っているみたい。
加賀美くんどうしたんだろう。
でも口には出せず、会社に着いてしまった。
エントランスを通り抜けるときも隠れることなく大介くんと加賀美くんと一緒に歩いた。
「槇村さん、おはようございます。石垣島、楽しめました?」
「梨花ちゃん、お土産あるよ。大介くんが遊びにきてくれて一緒にパラセーリングしたの。楽しかったよ。私たちからのお土産も置いておくから食べてね」
「ありがとうございます」
そう言ったあと、小声で私の耳元にはなしかけてきた。
「あの…山口くんとはそういう関係なんですか?」
私は驚いて梨花ちゃんの方を振り向き、小さな声で話した。
「違うよ。ただ、遊びに来てくれただけ」
「でも、加賀美さんが怒ってますよ」
「加賀美くん?」
「とりあえずまたお昼に話しましょう」
梨花ちゃんは自席へと戻って行った。
加賀美くんが怒ってる?
どうしてだろう。
加賀美くんに何かしたかな?
でもさっきもなんだかおかしかったんだよね。
外面のいい加賀美くんが梨花ちゃんにも分かるくらい機嫌が悪いなんて珍しいな。
そう思いながらも仕事を始めた。
お昼になり、梨花ちゃんに誘われお昼に出かけた。梨花ちゃんにしては珍しく人の少ない寂れたお店だった。
「ここなら会社の人が誰も来ませんから」
「う、うん。そっか。でもどうしたの?」
「どうしたもこうしたもないですよ。なんで山口くんと出かけてるんですか。加賀美さん知ってたんですか?2人で行くことを」
「え?知らなかったよ。私も知らなかったし。大介くんが突然来たんだもん。夕飯一緒に食べましょーって」
「すごい行動力。山口くんってそんな感じなんだ」
「すごいよね。私なんて思っても飛行機に乗るなんてなかなか出来ないよ。大介くんはリュック一つで来てたよ」
「もう。それは槇村さんが好きだからですよね。じゃなきゃ、駆けつけないですよ」
「え。あ、そうかなぁ」
「そうですよ。でもそれを聞いた加賀美さんは相当焦ってますよ。そして怒ってます。山口くんとは付き合ってるんですか?山口くんに堕ちちゃったんですか?」
「え?加賀美くん?焦るって何?大介くんとは付き合ってないよ。でも、この前そんなようなことをにごわされた、かな」
「もう!どうするんですか。加賀美さんだって槇村さんを好きなんですよ。だからこの半年間ずっと守ってきたんじゃないですか」
「え?」
「もう!どうしてそんなに鈍いんですか」
「だって。加賀美くんはみんなに優しいし、気遣いのある人じゃない?でも私には口うるさいし、ぶつかってくるもの。最近優しくしてくれてるのは私にあんなことがあったから同僚として憐れんでくれてるんだと」
「明らかに同情ではなく愛情ですよ。感じませんか?」
「えっと。前より優しくなったとは思うけど」
「あの優しい視線にさりげなく槇村さんを隠している姿に私はキュンキュンしてましたよ。あの姿を見て私は加賀美さんを諦めなきゃと思いました。でも本人が気が付いていなかったなんて」
「そうだったの?私、目一杯で気が付かなかった。でも本当にそうだったかなぁ」
「もう!槇村さんは鈍すぎます」
「梨花ちゃん、そんなに興奮しないで。とりあえず飲んで」
私は運ばれてきたドリンクを手渡すと梨花ちゃんは一気に飲み始めた。
「この前、大介くんには後輩としてみないで欲しいと言われたんだ。けど姉弟、という感じに思えちゃって。でも今回石垣島を一緒に回って
少し見る目が変わったっていうか」
「山口くんが槇村さんの圏内に入ったんですか?」
「うーん。そもそももう誰とも付き合う気持ちはない、っていうのが本音なの。裏切られるのが嫌だから」
「それはわかります。けど、決めて恋愛しないっていうのはおかしくないですか。好きになるって心が勝手に揺さぶられるもので決められるものではないですよ。だから槇村さんも先のことなんてわからないじゃないですか」
「揺さぶられる、かぁ。梨花ちゃん凄いね。なんだか私よりも達観してる。」
「そんなことないです。でも周りから見るとっていうことがたくさんあるんですよ。客観的に見る分、わかることもあるんです。だから槇村さんには幸せになることを初めから諦めないで欲しいんです」
「ありがとう。梨花ちゃんにこんなに言ってもらえるなんて嬉しいよ」
梨花ちゃんにはこう言われたけど、私はまた恋愛出来るのかな。
加賀美くんは本当に私のことが好きなのかな。
大介くんの気持ちを嬉しく思うけど、このまま受け止めていいのかな。大介くんといると楽しいし私のことをわかってくれている気がするけどそれって好きなのかな。
もうどうしたらいいのかわからなかった。
梨花ちゃんと食事を終えて自席に戻るけど加賀美くんはまだ戻っていなかった。
本当に加賀美くんは私のことをそんなふうにみてるのかな……
考えるだけで胸がざわついた。
すると山口が改札から出てきた。
「加賀美さん、おはようございます。槇村さんを待ってるんですか?俺が一緒に行くんで大丈夫ですよ。俺が待ちますよ」
「あ、あぁ。でも俺が毎日一緒に行ってるから待つよ」
「大丈夫ですよ。俺が付き添いますから心配ないですよ」
どちらがここで待って会社まで一緒に行くか押し問答していたなんて私は全く気が付かず、改札から出ると2人が一緒にいたことに驚いた。
「おはよ。珍しいね。2人一緒の時間だなんて」
「あぁ、たまたまな」
「槇村さん、おはようございます。昨日早速アレで飲んじゃいました」
「本当?良かった、選んで。使ってくれるなら嬉しい。私は流石に会社では使えないからプライベート用にさせてもらうね」
「はい。好きな時に使ってください。でも絶対似合いそう」
歩きながら話し始める私たちの後ろを加賀美くんがついてくる形になってしまった。
加賀美くんからの視線を背中に受け、なんとなく居心地も空気も悪い。
土日の電話は私のことを心配してくれていたのに今は怒っているみたい。
加賀美くんどうしたんだろう。
でも口には出せず、会社に着いてしまった。
エントランスを通り抜けるときも隠れることなく大介くんと加賀美くんと一緒に歩いた。
「槇村さん、おはようございます。石垣島、楽しめました?」
「梨花ちゃん、お土産あるよ。大介くんが遊びにきてくれて一緒にパラセーリングしたの。楽しかったよ。私たちからのお土産も置いておくから食べてね」
「ありがとうございます」
そう言ったあと、小声で私の耳元にはなしかけてきた。
「あの…山口くんとはそういう関係なんですか?」
私は驚いて梨花ちゃんの方を振り向き、小さな声で話した。
「違うよ。ただ、遊びに来てくれただけ」
「でも、加賀美さんが怒ってますよ」
「加賀美くん?」
「とりあえずまたお昼に話しましょう」
梨花ちゃんは自席へと戻って行った。
加賀美くんが怒ってる?
どうしてだろう。
加賀美くんに何かしたかな?
でもさっきもなんだかおかしかったんだよね。
外面のいい加賀美くんが梨花ちゃんにも分かるくらい機嫌が悪いなんて珍しいな。
そう思いながらも仕事を始めた。
お昼になり、梨花ちゃんに誘われお昼に出かけた。梨花ちゃんにしては珍しく人の少ない寂れたお店だった。
「ここなら会社の人が誰も来ませんから」
「う、うん。そっか。でもどうしたの?」
「どうしたもこうしたもないですよ。なんで山口くんと出かけてるんですか。加賀美さん知ってたんですか?2人で行くことを」
「え?知らなかったよ。私も知らなかったし。大介くんが突然来たんだもん。夕飯一緒に食べましょーって」
「すごい行動力。山口くんってそんな感じなんだ」
「すごいよね。私なんて思っても飛行機に乗るなんてなかなか出来ないよ。大介くんはリュック一つで来てたよ」
「もう。それは槇村さんが好きだからですよね。じゃなきゃ、駆けつけないですよ」
「え。あ、そうかなぁ」
「そうですよ。でもそれを聞いた加賀美さんは相当焦ってますよ。そして怒ってます。山口くんとは付き合ってるんですか?山口くんに堕ちちゃったんですか?」
「え?加賀美くん?焦るって何?大介くんとは付き合ってないよ。でも、この前そんなようなことをにごわされた、かな」
「もう!どうするんですか。加賀美さんだって槇村さんを好きなんですよ。だからこの半年間ずっと守ってきたんじゃないですか」
「え?」
「もう!どうしてそんなに鈍いんですか」
「だって。加賀美くんはみんなに優しいし、気遣いのある人じゃない?でも私には口うるさいし、ぶつかってくるもの。最近優しくしてくれてるのは私にあんなことがあったから同僚として憐れんでくれてるんだと」
「明らかに同情ではなく愛情ですよ。感じませんか?」
「えっと。前より優しくなったとは思うけど」
「あの優しい視線にさりげなく槇村さんを隠している姿に私はキュンキュンしてましたよ。あの姿を見て私は加賀美さんを諦めなきゃと思いました。でも本人が気が付いていなかったなんて」
「そうだったの?私、目一杯で気が付かなかった。でも本当にそうだったかなぁ」
「もう!槇村さんは鈍すぎます」
「梨花ちゃん、そんなに興奮しないで。とりあえず飲んで」
私は運ばれてきたドリンクを手渡すと梨花ちゃんは一気に飲み始めた。
「この前、大介くんには後輩としてみないで欲しいと言われたんだ。けど姉弟、という感じに思えちゃって。でも今回石垣島を一緒に回って
少し見る目が変わったっていうか」
「山口くんが槇村さんの圏内に入ったんですか?」
「うーん。そもそももう誰とも付き合う気持ちはない、っていうのが本音なの。裏切られるのが嫌だから」
「それはわかります。けど、決めて恋愛しないっていうのはおかしくないですか。好きになるって心が勝手に揺さぶられるもので決められるものではないですよ。だから槇村さんも先のことなんてわからないじゃないですか」
「揺さぶられる、かぁ。梨花ちゃん凄いね。なんだか私よりも達観してる。」
「そんなことないです。でも周りから見るとっていうことがたくさんあるんですよ。客観的に見る分、わかることもあるんです。だから槇村さんには幸せになることを初めから諦めないで欲しいんです」
「ありがとう。梨花ちゃんにこんなに言ってもらえるなんて嬉しいよ」
梨花ちゃんにはこう言われたけど、私はまた恋愛出来るのかな。
加賀美くんは本当に私のことが好きなのかな。
大介くんの気持ちを嬉しく思うけど、このまま受け止めていいのかな。大介くんといると楽しいし私のことをわかってくれている気がするけどそれって好きなのかな。
もうどうしたらいいのかわからなかった。
梨花ちゃんと食事を終えて自席に戻るけど加賀美くんはまだ戻っていなかった。
本当に加賀美くんは私のことをそんなふうにみてるのかな……
考えるだけで胸がざわついた。