置き去りにされた花嫁をこの手で幸せに
【加賀美くんからの想いは思ってもみないことで、でもとても嬉しかった。けど私はもう恋愛とか考えられない。心を揺さぶられたくない。
穏やかに過ごしたいの。加賀美くんといるとどうしても目立つでしょ。だから隣にいるのも辛いの。私は仕事が楽しいから、だけでは頑張れなくなってしまったみたい。ここまで頑張ってきて、やっとホテルが完成に近づきスタッフのトレーニングや備品、アクティビティとか全てが大詰めになってきた今、仕事を離れるのは無責任で非常識なことだとわかってる。でももう無理みたい。もう心が折れちゃった。ごめんなさい】

やっと送信ボタンを押すとすぐに既読がついた。
ふぅ、と息を吐き、力を抜いた。
加賀美くんがこんなに言ってくれてるのに私は想いを返せない。ごめんなさい、と心の中で何度も謝った。

悠介とではなく初めから加賀美くんだったらよかった。
加賀美くんは近くにいすぎて私には彼の良さを気づけなかった。

加賀美くんからの返信はなく、それが返事だと思った。

やっと室長に退職の意向を伝えられて気持ちが落ち着いたのか夕飯が食べられた。
両親も私が食べれてホッとした表情を浮かべていた。

お風呂から出るとスマホが点滅していた。
手に取り見ると加賀美くんから1時間前にメッセージが届いていた。

【会いたい】

ただ、それだけだった。

どうしよう……

辞めないように説得…?
それとも別のこと?

既読がついたことに気がついたのかまたメッセージが届いた。

【今近くにいるんだ。出てこられないか?俺が家に行ってもいい。両親にまた挨拶しても構わない】

【近くにいるの?】

1月の寒い中、加賀美くんはどこにいるんだろう。
すぐに返信が来た。

【槇村の家の近くにある公園。とんがり公園って書いてある】

家から3分くらいのところじゃない。
まさか1時間もそこにいたの?

【すぐ行くから!】

私は慌ててデニムとパーカーに着替え、コートを着て家を飛び出した。
< 70 / 84 >

この作品をシェア

pagetop