置き去りにされた花嫁をこの手で幸せに
「加賀美くん!」
私が駆け寄ると加賀美くんは私を抱きしめた。
加賀美くんの体はとても冷たくて、冷え切っていた。
「ごめんね、すぐにメッセージに気が付かなくて」
「いいんだ。俺が勝手に来ただけだから。でも会えてよかった。昨日会ったけどまた今日も会いたかった」
ぎゅっと抱きしめられる。
私は加賀美くんの顔を見てもう逃げられないかも、とふと感じた。
「加賀美くん、寒かったよね」
「あ、ごめん。俺が冷たいよな。でもごめん。やっと槇村が俺の腕の中にいるんだ。離せるわけがない。槇村のことが好きだからずっと俺のここにいてくれないか」
加賀美くんの力は強いけど優しかった。
耳元で言われるたびに蓋をしたはずの感情が開いてしまう。
胸の奥が疼き始め、喉の奥が締め付けられる。
「槇村。俺が目立つから隣にいられないなんて言わないでくれよ。俺自身を見てくれよ。お前は目立つから俺の隣に居られないと言うけど、そんな事も忘れるくらいに俺がお前を守るから。だからいつもみたいに素の俺をみて考えてくれよ」
加賀美くん……
何度もぶつけられる彼の感情に私はぐらぐらと揺らいでいる。
加賀美くんは意地悪な事をいうけど、さりげなく助けてくれることを知ってた。
見た目のいい加賀美くんの隣に並ぶために私は仕事という力をつけたかった。それ以外で私は自慢できる事も見た目もなかったから。
加賀美くんと肩を並べて働くために頑張ってきた。同僚として胸を張って隣にいられるように頑張ってきた。
その自信があったから隣に居ても胸を張っていられた。
でも今は彼氏に結婚式で捨てられた可哀想な女としてしかみていない。みんなは仕事を見てくれるわけではなく加賀美くんや大介くんをはべらしてるとでもいわんばかりのことを言われ、ガタガタと自信が崩れ落ちてしまった。
仕事だけが唯一頑張ってきたことだったのに。加賀美くんと切磋琢磨してきたつもりだったのに。
「私ね、加賀美くんと肩を並べて働くために頑張ってきたつもりだったの。でもみんなはそう思ってくれていなかった。なんかもう何もかも、何でも良くなっちゃった。今まで何してきたんだろう」
アハハ、と情けなく空笑いする。
「だから加賀美くんにここまでいってもらう資格ないんだ。打倒加賀美、なんて言ってたのをみんな笑ってたんだろうね」
「そんなことない!俺は槇村がいたから切磋琢磨してきたんだ。唯一無二の存在だって昨日も話した。お前がいなければ俺はアイデアも浮かばない顔だけの男だよ」
「まさか。加賀美くんは何でも卒なくこなすじゃない」
「それは槇村がいたから。世界はお前がいなくても回っている。でも俺の世界はお前がいないと動き始めなくなってしまった」
加賀美くんの手は私を抱きしめる力が弱まることがない。
「お前じゃなきゃダメなんだ」
ダメ押しのように言われ、私の手はガタガタと震え出した。
目から涙がこぼれ落ちた。
その涙に加賀美くんが唇を寄せ優しく吸い取る。
「もう何も心配はいらない。槇村のことは俺が一番わかっている。お前は胸を張っていいんだ。後ろ指さされるようなことは何一つない。もしも誰かがお前に何か言うのなら俺が全身全霊をかけて守ると誓う」
その強い言葉に涙はさらに流れ落ち、嗚咽まで漏れ出てしまった。
力が抜け、加賀美くんに縋るように抱きついた。
加賀美くんは私を抱き上げ、近くのベンチまで連れて行ってくれた。そしてぴったりくっついて座ると耳元でこう囁いてきた。
「槇村のいいところは白黒はっきりしてるところだろ。俺に落ちてくれるか教えてくれないか」
「……加賀美くんは……本当に私がいいの?嘘をつかない?裏切らない?私、怖いの。また裏切られたら、と思うと怖くて仕方ないの。情けなくてごめんね。私も加賀美くんといると胸がドキドキする。けど、もし裏切られたらと思うと一歩踏み出せない」
「俺は裏切らない。槇村が嫌だと言うまでこの先離れることはない」
「加賀美くん」
私から加賀美くんに抱きついた。
すぐに加賀美くんは受け止めてくれ、座ったままぎゅっと抱きしめあった。
少し力が緩むと加賀美くんは私の顔を覗き込み、優しく唇を合わせてきた。
次第に角度を変え、何度もお互いの形を探るかのようなキスを繰り返す。
どれだけキスをしていたのだろう。
ふと唇が緩むと加賀美くんは私の中に入り込み、口の中を探り始めた。歯列をなぞられ、舌を絡ませあい今までと関係が変わったことを思い知った。
「槇村、ありがとう。俺、絶対後悔させないから」
私は頷く。
加賀美くんを信じていこうと誓った。
私が駆け寄ると加賀美くんは私を抱きしめた。
加賀美くんの体はとても冷たくて、冷え切っていた。
「ごめんね、すぐにメッセージに気が付かなくて」
「いいんだ。俺が勝手に来ただけだから。でも会えてよかった。昨日会ったけどまた今日も会いたかった」
ぎゅっと抱きしめられる。
私は加賀美くんの顔を見てもう逃げられないかも、とふと感じた。
「加賀美くん、寒かったよね」
「あ、ごめん。俺が冷たいよな。でもごめん。やっと槇村が俺の腕の中にいるんだ。離せるわけがない。槇村のことが好きだからずっと俺のここにいてくれないか」
加賀美くんの力は強いけど優しかった。
耳元で言われるたびに蓋をしたはずの感情が開いてしまう。
胸の奥が疼き始め、喉の奥が締め付けられる。
「槇村。俺が目立つから隣にいられないなんて言わないでくれよ。俺自身を見てくれよ。お前は目立つから俺の隣に居られないと言うけど、そんな事も忘れるくらいに俺がお前を守るから。だからいつもみたいに素の俺をみて考えてくれよ」
加賀美くん……
何度もぶつけられる彼の感情に私はぐらぐらと揺らいでいる。
加賀美くんは意地悪な事をいうけど、さりげなく助けてくれることを知ってた。
見た目のいい加賀美くんの隣に並ぶために私は仕事という力をつけたかった。それ以外で私は自慢できる事も見た目もなかったから。
加賀美くんと肩を並べて働くために頑張ってきた。同僚として胸を張って隣にいられるように頑張ってきた。
その自信があったから隣に居ても胸を張っていられた。
でも今は彼氏に結婚式で捨てられた可哀想な女としてしかみていない。みんなは仕事を見てくれるわけではなく加賀美くんや大介くんをはべらしてるとでもいわんばかりのことを言われ、ガタガタと自信が崩れ落ちてしまった。
仕事だけが唯一頑張ってきたことだったのに。加賀美くんと切磋琢磨してきたつもりだったのに。
「私ね、加賀美くんと肩を並べて働くために頑張ってきたつもりだったの。でもみんなはそう思ってくれていなかった。なんかもう何もかも、何でも良くなっちゃった。今まで何してきたんだろう」
アハハ、と情けなく空笑いする。
「だから加賀美くんにここまでいってもらう資格ないんだ。打倒加賀美、なんて言ってたのをみんな笑ってたんだろうね」
「そんなことない!俺は槇村がいたから切磋琢磨してきたんだ。唯一無二の存在だって昨日も話した。お前がいなければ俺はアイデアも浮かばない顔だけの男だよ」
「まさか。加賀美くんは何でも卒なくこなすじゃない」
「それは槇村がいたから。世界はお前がいなくても回っている。でも俺の世界はお前がいないと動き始めなくなってしまった」
加賀美くんの手は私を抱きしめる力が弱まることがない。
「お前じゃなきゃダメなんだ」
ダメ押しのように言われ、私の手はガタガタと震え出した。
目から涙がこぼれ落ちた。
その涙に加賀美くんが唇を寄せ優しく吸い取る。
「もう何も心配はいらない。槇村のことは俺が一番わかっている。お前は胸を張っていいんだ。後ろ指さされるようなことは何一つない。もしも誰かがお前に何か言うのなら俺が全身全霊をかけて守ると誓う」
その強い言葉に涙はさらに流れ落ち、嗚咽まで漏れ出てしまった。
力が抜け、加賀美くんに縋るように抱きついた。
加賀美くんは私を抱き上げ、近くのベンチまで連れて行ってくれた。そしてぴったりくっついて座ると耳元でこう囁いてきた。
「槇村のいいところは白黒はっきりしてるところだろ。俺に落ちてくれるか教えてくれないか」
「……加賀美くんは……本当に私がいいの?嘘をつかない?裏切らない?私、怖いの。また裏切られたら、と思うと怖くて仕方ないの。情けなくてごめんね。私も加賀美くんといると胸がドキドキする。けど、もし裏切られたらと思うと一歩踏み出せない」
「俺は裏切らない。槇村が嫌だと言うまでこの先離れることはない」
「加賀美くん」
私から加賀美くんに抱きついた。
すぐに加賀美くんは受け止めてくれ、座ったままぎゅっと抱きしめあった。
少し力が緩むと加賀美くんは私の顔を覗き込み、優しく唇を合わせてきた。
次第に角度を変え、何度もお互いの形を探るかのようなキスを繰り返す。
どれだけキスをしていたのだろう。
ふと唇が緩むと加賀美くんは私の中に入り込み、口の中を探り始めた。歯列をなぞられ、舌を絡ませあい今までと関係が変わったことを思い知った。
「槇村、ありがとう。俺、絶対後悔させないから」
私は頷く。
加賀美くんを信じていこうと誓った。