嘘は溺愛のはじまり
翌日、仕事を終えて印刷所を出ると、マナーモードにしていたスマホがブルブルと振動して、メッセージの着信を知らせている。
見ると、カフェのマスターからだった。
【今日の夜、店に来られますか?】
私はすぐに【はい、いま退社したので、これからお邪魔する予定です】と返すと、すぐに【お話があるのでお待ちしています】と返ってきた。
……話、って、何だろう?
もしかすると、もう何か仕事を見つけてくれた、とか……?
いや、まさか。だって、昨日の今日だ。
とにかく私はカフェへと急いで向かった。
「結麻さん。昨日の、お仕事の件ですけどね」
「はい」
「僕の知り合いに、役員秘書の補佐を探している人がいて」
「秘書の補佐、ですか……」
私の反応を見たマスターが、ふわりと微笑んだ。
「主な役員にはひとりずつ秘書が付いているんですが、多忙すぎて事務処理などが滞りがちと言うことで、それらの事務仕事を補佐する人を募集していると言うことらしいんですけど。……どうでしょうか?」
「それは、ありがたいですけど……私なんかで大丈夫でしょうか……?」
「問題ないと思いますけど、不安でしたらぜひ直接聞いてみて下さい」
「えっ、あ、はい? 直接……?」