嘘は溺愛のはじまり
「えっと、部屋が、広く感じます……」
『……部屋?』
「もともと広かったけど、更に……?」
ほんの少し酔っているせいか、上手く嘘がつけている気がしない。
『うん……なるほど。早く帰るね』
「え? えっと……」
『結麻さん』
「は、い」
『俺は、寂しい』
「……っ」
どこまでも罪な伊吹さんは、あっさりと爆弾のスイッチを押して、私の心を爆発させた。
勘違い、してしまう。
そんな風に、恋人に囁く睦言みたいなこと、言わないで欲しい。
私のことはきっと、何とも思ってないのに……。
……ああ、電話で、良かった。
ビデオ通話だったら、少し酔ってたり、赤くなったり、泣いたりしたのがばれてしまう。
『ごめん、もう少し話していたいけど、このあと会食があって、そろそろ行かなきゃいけない』
「あ、はい。大事なお仕事ですから」
『少しだけでも結麻さんの声が聞けて良かった。じゃあ……おやすみ』
「お、おやすみなさい」