嘘は溺愛のはじまり


次に目を覚ましたのは、もうすっかりと夜が明けきった頃だった。

外の明るさに驚いて、一気に覚醒する。


「っ!?」


やっぱり伊吹さんに抱き締められていて驚くが、それどころじゃない。

昨晩は私がちょっと強引に伊吹さんのお母様に泊まっていただいた。

起きて、朝食の準備をしなければ……!

伊吹さんの腕から抜け出そうと、もがく。


「……ん、結麻さん、おはよう」

「おはようございます。あの、私、起きないと……っ」

「んー、……ああ、そうだ。母なら、帰りました」

「……えっ?」


伊吹さんの言葉に驚いて私が思わず身体を捩って振り返ると、微笑む伊吹さんとごく間近で目が合う。

起き抜けのはずなのに伊吹さんは相変わらず綺麗で……思わず一気に顔に熱が集まった。


「邪魔しちゃ悪いからって言って、朝一番で帰りましたよ。だから、もう少し寝ていても大丈夫です」

「えっ、わ、わわっ」


後ろから抱き締められたまま振り返っていた体勢を、伊吹さんの手によってぐるりと反転させられ、今度は向かい合った状態でギュッと抱き締められる。

え、えええっ……!?

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