嘘は溺愛のはじまり

結局その日のうちに処理することが出来なかった書類は、翌日、野村さんに教えて貰い無事に処理することが出来た。

まだまだ全然仕事が出来ない自分に落胆する。


「んー? 若月ちゃん、どしたのー」

「いえちょっと……、自分がダメすぎて……」

「あははは、大丈夫大丈夫ー! 私だって一年目は酷かったからさー。伝説の社内迷子だもんー。笹原さんに教えて貰いながら、毎日めちゃくちゃへこんでたよー!」


カラリと笑いながら野村さんは自身の仕事をどんどん処理していく。

やっぱり野村さんは超人だ。

いつか私も野村さんみたいになれるだろうか……。

いや、無理だろうな、あまりにも色々違いすぎる……。


「あ、そうだー、社内迷子と言えば……もう一ヶ所案内しないといけない所があったの、忘れてたんだよねー」


そんなに頻繁に行くこともないんだけどねー、と言いながら、野村さんは鍵が入っている棚から一本の鍵を取り出す。


「思い出した時に案内しとかないと、忘れちゃうからさー。ちょっと行こっか」


野村さんに連れられてやって来たのは、書庫だった。

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