嘘は溺愛のはじまり
辛いことがあった日でも、眠るのはやはり、伊吹さんと同じベッドで……。
今朝も相変わらず伊吹さんに後ろから抱き締められている状態で目が覚めた。
しかも、日に日に密着度合いが高まっている気がする。
朝晩がとても冷え込むようになって来たから、なのかも知れない……。
ベッドサイドの時計を見ると、あと少しで私の起きる時間になる。
伊吹さんを起こさないように腕の中から抜け出すのは、毎度、至難の業で……。
「……ん、」
なんとか伊吹さんの腕から抜け出そうとするけれど、今日の拘束は全く緩みそうもなかった。
むしろ、私が少し動くたびに、更にすり寄られている気さえする。
えっと……、どうしよう、起きれない。
ぎゅう、と抱き締められ……。
このシチュエーション、本当にしあわせではあるんだけど……。
なんとか腕から抜け出そうと、そっと身体をよじると、耳元で「……結麻さん」と私を呼ぶ声がする。
伊吹さんの、寝言……?
……いやいや、そんなわけないか。
「ん……、おはよう」
少し掠れた声で囁かれる。
やはり、起こしてしまったらしい。
「お、おはようございます……。ごめんなさい、起こしてしまって……」
「うん、……もうちょっとこのままでいてくれたら、許すよ、……だってアラーム、まだ鳴ってないでしょう?」
「は、い……」