嘘は溺愛のはじまり
うっ、それは多分、私の心臓が大丈夫じゃない気がするけど、身動きできないものは仕方がない……。
「こうやって結麻さんを抱き締めてると、すごく暖かい」としあわせそうな、低く響く甘い声で囁かれ、私の心臓はもう破裂寸前だった。
激しすぎる心音が、伊吹さんに伝わっていなければ良いけれど……。
アラームが鳴るまで、あとほんの数分――。
身じろぎひとつ出来ず、ドキドキうるさい心臓を宥めることも出来ないでいるうちに、枕元の目覚まし時計がアラーム音を鳴らす。
止めようと手を伸ばすそうとすると、上体をほんの少しだけ起こした伊吹さんがアラームを止めてくれた。
「ありがとうございます」
「ん。もうちょっとこのまま、寝ていたいね……」
そう言いながら、私の耳元へと顔を寄せてきて……。
「……っ!?」
伊吹さんの、唇が……私の耳を、掠めた――。
ふ、と伊吹さんが嬉しそうに笑う音がする。
「結麻さんの耳、熱い……」
それは、こんな状態で、ドキドキしてしまってるから……!
このシチュエーションでドキドキするなと言う方が、無理、だと思う……!