嘘は溺愛のはじまり
「あ、の……、もう、起きなきゃ……」
「今日は、ふたりで休もうか……?」
「だ、だめ、ですっ」
私がしどろもどろで答えると、伊吹さんは「……はは、それは残念」と笑いながら、私を抱き締める腕を緩めた。
即座に伊吹さんから離れ、ベッドを降りる。
冗談なのか本気なのかがいまいちよく分からないけど……まさか超多忙な伊吹さんがお休みできるはずもない。
気怠げに横たわる妖艶すぎる伊吹さんをベッドに残し、私は大急ぎで寝室を出た。
身支度を調え、朝食の準備に取りかかる。
目の端にイヤでも映り込んでくる、昨晩飾り付けられた美しい花々のことは、なるべく無視して……。
泣かない、泣きたくない。
誰にだって分かるはずだ、私に泣く権利なんかないって。
ぐっと歯を食いしばり、私は朝食を作り始めた――。