嘘は溺愛のはじまり
はぁっ、はぁっ……、
足がもつれて、上手く走れない。
恐怖で、呼吸が上手く出来ない。
密室となった書庫の中を走って逃げ回ったとしても、逃げ切れるわけがないと分かっている。
それでも、怖い、恐ろしい、だから、逃げなきゃ……。
ガクガクする自分の両足を叱咤して、必死に前へと踏み出す。
時折、背後の気配と、棚の隙間から見え隠れするはずの相手の姿を気にしながら……。
私の場所は足音から相手に筒抜けになるから、途中でパンプスを脱ぎ捨てた。
音がしなくなったし、走りやすくなった。
けれどそれでも、足に力が入らなくなって時々もつれてしまう。
「……あっ、」
恐怖で膝の力が抜け、私は床にガクリと膝をついた。
はぁ、はぁ、と肩で息をする。
背後に気配はしないから、少し息を整えて、体力を温存して、それから、
それから……、