嘘は溺愛のはじまり
――いや! やめて!!
そう叫べたら、どんなに良いか……。
叫んだところで、密室と化した広い書庫の中、誰かに聞こえるはずもないのだけれど……。
組み敷かれた状態でガタガタと震え、首を振るしか出来ない私……。
恐怖と絶望から、目に涙がじわりと滲む。
そんな私を至近距離でうっとりと気持ち悪い表情で眺める谷川部長の顔が更に近づいて――、顔を背ける間もなく、唇を押しつけられた――。
「……っ!」
やめて、と言おうとしたけれど、やはり恐怖で声は出ず、身体が恐怖と屈辱とで、ただただ震えるだけだった。
悔しさと息苦しさと気持ち悪さで、私の目から涙が零れ落ちる。
と、不意に、唇が離れた。
はぁ、はぁ、……と荒く呼吸する私を見て、ククク、と気持ち悪い笑みを浮かべている。
「そんなに僕のキスで感じて……いやらしい子だ」
「……っ」
感じてなんか、いるわけがない……!
わなわなと震えるけれど、言葉に、声にならず、ただ身体を震わせるだけの私を、谷川部長はニヤニヤしながら見下ろしていた。
「じゃあ、いっぱい楽しもうねぇ? クククッ」