嘘は溺愛のはじまり
私は何度も「やめて下さい!」と言って抵抗したけれど、大人の男性の力に抗えるはずも無く、体勢を入れ替えるようにして私の上に覆い被さったその人に身体じゅうをまさぐられ、無理矢理唇を奪われ、着ていたTシャツをまくり上げられ……。
高校生ともなれば、このあと自分がどんなことをされるのかはさすがに容易に想像がついた。
私は恐怖でガタガタと震え、「やめてください」と、震えて掠れる声で懇願するのが精一杯だった。
こんな男に好きなようにされるぐらいなら、いっそ、いまここで死んだ方がましだ……。
この状態で自分で自分を傷付けて殺せる方法は、ひとつしかない。
舌を、噛み切ってしまえば……。
それをしたら、どれぐらい痛いんだろう……?
どれぐらい、血が流れるんだろう……?
分からない、怖い、死ぬのも、……この男に犯されるのも……。
その時――
「結麻ぁ、ただいまぁ」
だるそうな声でそう言いながら、母がリビングの扉を開けた。
すぐにソファでもみ合う私たちに気付き、吃驚の声を上げた。
「あっ、あなたたち、何を……っ!!!」
「こ、これは、ち、違うんだっ! 結麻ちゃんが僕を誘惑してきて……!!」
私の上に跨がるようにのしかかっていた古田は、慌てて私の上から飛び退きながら、こう叫んだ――
「その淫乱な女が誘ってきたんだ、俺は何も悪くない! 子供のくせに、このあばずれめ!!」