嘘は溺愛のはじまり

なんとか高校を卒業し、女子大にも無事に合格。

女子大は都内にあって実家から通うことはほぼ不可能で、私は住む場所を借りて都内で一人暮らしをすることになった。

最初は不安もあったけど、幸いとてもいい人ばかりに囲まれて過ごすうちに、だんだん昔ほど男性に恐怖を覚えなくなっていた。

それでも急に距離を詰められたり、馴れ馴れしくされるのは本当に苦手だったけど。


あと、自分なりに男性との距離の取り方も覚えた。

気休めでしかないけれど、年齢を問わず――年下の男の人にも、敬語で話すようになった。

言葉で距離を取っているうちは、安全な気がして。

だから、楓さんとひとつしか年が違わなくても、私にはどうしても敬語を外すことは出来ない。

楓さんを信用していないからではなく、やっと築いた“私の世界”が崩れてしまいそうで、こわいから……。



――こんな私だから、自分から誰か男の人を好きになるだなんて、起こるはずがないと思っていた。

私は、“そう言う女”、だから……。


自分の意思とは別に、男を誘ってしまう、ふしだらな女――。


それなのに……。

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