嘘は溺愛のはじまり

「あの時一緒にいたのは、従妹だよ。父の弟の、娘」

「いとこ……?」

「そう。小さい頃からずっと一緒に育ってきたから、もう妹みないなものだよ」

「……そう、なんですか」

「彼女は来年に結婚を控えてるんだけど、その婚約者はいまアメリカに長期出張中で……。そいつは俺の幼なじみなんだけどね。代わりに結婚式の手配の手伝いを頼まれてて」


呆れたように笑いながら、「ふたりとも俺のこと信頼してくれてるのは嬉しいんだけどね」と伊吹さんは呟いた。


「でもあの時、俺はどっちかって言うと結麻さんのウエディングドレス、選んでた」

「え、え……?」

「今度一緒に選びに行こうね?」

「……え、えええ? えっ、と……?」


伊吹さんは、明らかに慌てふためいている私の反応を見て、クスクスと笑っている。

ぜんぜん意味が、ちょっと、理解できてないんですけど、えええ……?


「……結麻さん」

「……はい」

「俺が好きなのは、結麻さんだけだから。結婚したいと思ってるのも、結麻さんだけだから」


私の理解が追い付かないままの状態でそうはっきりと言い切られてしまって、私はおろおろしてしまう。

だって……、私と伊吹さんのいまのこの関係は、偽の関係、のはず。

それがどうしてこんなことに……?

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