嘘は溺愛のはじまり
――それからすぐの週末のこと。
「今日は一日デートしよう」
起き抜けのベッドの中で伊吹さんにデートに誘われた。
朝から夜まで、世の中のカップルが行きそうな場所を巡るという、とても楽しそうなプランを提案される。
最も多感な時期に男性恐怖症になってしまった私にとっては、初めての恋愛で、初めての本物のデートだ。
……なんてこと、伊吹さんは気づいているだろうか。
気づかれている、気がする……。
「いっぱい楽しもうね」
そう言われ、私もコクリと頷いて、デートがスタートした――。
宣言通り、いかにもデートっぽい場所をあちこちのんびりと巡る。
映画を見て、ランチをして、ぶらりと街を歩いて、疲れたらカフェで休憩。
時折見つめ合うように視線が重なると、伊吹さんは満足そうに微笑み、私は照れ笑い……。
一度も経験したことのない、まるで映画や小説の中にいるようなデートを伊吹さんと体験してるのが、とても不思議。
でも、夢が一つ叶ったような、とても満ち足りた気持ちになる。
世の中の恋人たちはいつもこんな風に楽しんでるんだってことを、生まれて初めて知った。