嘘は溺愛のはじまり

伊吹さんに手を引かれてソファ席へ隣り合って座ると、目の前のテーブルにはワインクーラーにシャンパンがセットされていた。

伊吹さんが慣れた手つきでシャンパンのコルクを抜くと、ポンッ、と音が鳴る。

シャンパングラスに注がれた黄金色の液体の中で、小さな気泡が宝石のようにキラキラと光り、踊りながら舞い上がっていく。


それぞれ持ったグラスをカチンと合わせ、乾杯して。

少し口に含むと、泡がシュワシュワとはじけ、上品で華やかな香りが口の中に広がった。

とっても美味しい。


「どう? 飲める?」

「はい。とても美味しいです」

「良かった」


嬉しそうに微笑む表情の美しさに、ドキドキが加速する。

こんなに近くで、そんな風に微笑まれ、たった一口のアルコールですっかり酔ってしまったような感覚になってしまっている。


「結麻さん」


伊吹さんは持っていたグラスを置き、どこから取り出したのか、小さな箱を手にしていた。


「……え、」


ドラマでしか見たことのない光景が自分の目の前にあることに、思わず言葉を失う。

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