嘘は溺愛のはじまり


「結麻さん。愛しています。どうか俺と、結婚して下さい」


開かれたその小さな箱には、キャンドルの光を受けてキラキラと光り輝く指輪がおさめられていた。


どうしよう、うれしい、でも、私なんかで、大丈夫?

……なんて、そんな私の考えは、伊吹さんにすっかり見抜かれていたようで。


「俺は、結麻さんじゃなければダメだから。結麻さんだから、ずっと、一生一緒にいたいと思うんだよ」


そう言われ――。


……ああ。

私だって、同じだ。

伊吹さんだから、一緒にいたくて。

伊吹さんじゃないと、ダメで……。


箱の中の指輪がキラキラとした輝きを放って、ほら、はやく何か言って、と返事を促すようにきらめく。


だから私は、ほんの少し震える声で、


「はい、よろしく、おねがいします」


……そう答えると、伊吹さんは破顔した――。


ああ。

その笑顔だけで、私も、とても嬉しくなる……。

一生こうやって、ふたりで笑っていたい……。


伊吹さんが私の手を取り、光をたたえキラキラと光る指輪を私の指にそっと通す。


抱き締められ、私の左手に填められた指輪が光る手を伊吹さんの背中にそっと回して、私も伊吹さんを抱き締めた。


「ありがとう結麻さん。結麻さんのこと、一生、ずっと、大事にするからね」


耳元で囁かれる言葉。

うれしさとしあわせが込み上げてきて、視界がゆらゆらと揺れ、しあわせの証が、私の目からこぼれ落ちた……。

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