嘘は溺愛のはじまり
その後もいろいろキッチン用品について質問されたことに答えるだけ答えて、結局何も買わないままお店を後にした。
篠宮さんは何か買いたいものがあったんじゃないのかな……。
篠宮さんの質問に対して何も要らないと答えてばかりだったから、気を悪くしたりしていないだろうか……。
チラリと隣を歩く篠宮さんの表情を盗み見るけれど、不機嫌そうな様子は無く、むしろ少し楽しそうにしている気がする。
「このままどこかで食事をして帰りましょう。自炊は明日からと言うことで」
「はい、分かりました」
ショッピングモール内に入っているレストランで夕食を食べ、帰る前に翌朝の朝食用の食材を買って帰ることになった。
スーパーで朝食用の食材を選んでいて、ふと気付く。
「……あの、篠宮さんは、いつも朝食はどうされてるんですか?」
「コーヒーだけです」
「えっ、なにも召し上がらないんですか?」
「時間が無い時が多いですから。食べたり食べなかったりと言うのも良くなさそうなので」
「はあ、なるほど……。あ、ちなみに、昼食や夕飯はどうされてるんですか?」
「だいたい外食です」
「取引先の方との会食も多そうですもんね……」