嘘は溺愛のはじまり

篠宮さんが日頃どれぐらい忙しいのかは分からないけど、やはり自炊をしている時間はあまり無いんだろう。


「あの……もし篠宮さんさえ良ければ、ですが……」

「……?」

「二人分作るので、一緒に、食べませんか……?」

「え……?」


私の言葉を聞いた篠宮さんは、目を丸くして驚いている。

少し迷った末に思い切って口に出した言葉だけど、やっぱり少し差し出がましかったかな……。

自分の言葉に後悔し始めた私は、篠宮さんの返事を待つことなく、やっぱり無かったことに……と言おうと口を開きかけたところで、篠宮さんの表情がとても嬉しそうな笑顔に変わった。


「良いんですか? でしたら、ぜひ」

「はい、それは、もちろん」

「いや、嬉しいなぁ、若月さんの手料理が食べられるなんて」

「あ、えっと、ご期待に添えるかどうか分かりませんけど……」

「うん大丈夫です、若月さんが作ってくれたものなら何でも食べますから」


好き嫌いはありませんし、と言葉を続けて、篠宮さんは嬉しそうに笑った。


< 23 / 248 >

この作品をシェア

pagetop