嘘は溺愛のはじまり
篠宮さんが日頃どれぐらい忙しいのかは分からないけど、やはり自炊をしている時間はあまり無いんだろう。
「あの……もし篠宮さんさえ良ければ、ですが……」
「……?」
「二人分作るので、一緒に、食べませんか……?」
「え……?」
私の言葉を聞いた篠宮さんは、目を丸くして驚いている。
少し迷った末に思い切って口に出した言葉だけど、やっぱり少し差し出がましかったかな……。
自分の言葉に後悔し始めた私は、篠宮さんの返事を待つことなく、やっぱり無かったことに……と言おうと口を開きかけたところで、篠宮さんの表情がとても嬉しそうな笑顔に変わった。
「良いんですか? でしたら、ぜひ」
「はい、それは、もちろん」
「いや、嬉しいなぁ、若月さんの手料理が食べられるなんて」
「あ、えっと、ご期待に添えるかどうか分かりませんけど……」
「うん大丈夫です、若月さんが作ってくれたものなら何でも食べますから」
好き嫌いはありませんし、と言葉を続けて、篠宮さんは嬉しそうに笑った。