嘘は溺愛のはじまり

どうして、そうなった……!?

家まで送ったあと、大人しく寝ていると約束してくれたはずだ。

後のことは笹原と叔父にまかせて、俺は結麻さんの元へと急いだ。


――後で聞いたことだが、このときの電話は、楓からかかってきた。

結麻さんは、俺から楓にかけたと思ったらしい。


真相は……楓が、結麻さんの見ていない間に自らの携帯をタイマーで鳴らし、電話がかかってきたフリをして、店の裏で俺にかけてきた、と言うことだ。

彼女の目の前で俺に電話をすると逃げられると思ったから、らしい。


――ともあれ、結麻さんがどこかへ行ってしまう前に見つけることが出来て、本当に良かった。


理奈との関係もちゃんと説明して誤解を解いた。

これで何もかも、問題は解決した。


結麻さんは、自分が汚れた人間だと思っているらしいが、そんなわけがない。

最も多感な時期に彼女をそんな風に思わせた男が、心の底から憎かった。

そして、今回その考えを助長してしまった谷川も。


結麻さんが汚れているだなんて、そんなわけがない。優しくて、可憐で、とても素敵なひとだ。

心から、愛している。

俺の気持ちを、言葉で、態度で、俺の全てで、信じてもらえるように必死に努力するから。


だからどうか、どうか、俺を拒まないで欲しい……。

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