嘘は溺愛のはじまり
――全てが片付いて、結麻さんもやっと落ち着いて眠れるようになったようだ。
最初は恥ずかしがっていたけれど、最近では最初から俺に抱き締められて眠ることにも少しずつ慣れてきたたらしい。
恥ずかしそうに頬を赤らめながらも、嬉しそうな表情をしてくれるようになった。
「結麻さん、おやすみ」
彼女のなめらかな額に、そっと口づける。
すると、腕の中の彼女が俺の名を呼んだ。
「ん?」
「あの、……」
おずおずと顔を上げた彼女の瞳と出会う。
「えっと……」
「うん?」
俺が顔を覗き込むと、さっきより更に頬を赤く染めていた。
「あの、わたし……」
「なに? まだ、眠くない?」
結麻さんは俺の言葉に、小さく頷く。
「あの、私、伊吹さんのことは……、こわくないです……」
「うん」
「あの……」
結麻さんはそれ以上言葉を続けずに、俯いてしまった。
顔は見えないけれど、耳が真っ赤に染まっているのが見える。