嘘は溺愛のはじまり

――次の週末、マンションに大きな段ボール箱が何箱も届いた。

箱の中には鍋や食器など、ショッピングモールで篠宮さんと一緒に見た品々がぎっしりと詰まっている。


「あ、の……」

「うん、やっぱり欲しくなってしまったので、買ってしまいました」


柔らかく微笑みながらしれっと告げる篠宮さんに、思わず絶句してしまう。


「若月さんが持ってきているものと一緒に使ってくれると嬉しいんですが」

「……は、い」


にっこりとそんな言葉を続けられて、私は頷くしかない。

私が料理を作ると言わなければ、……いや、そもそも私がここに住むことにならなければ、必要となるはずのなかった品々だ。

高級なそれらの道具を使えることは嬉しいけど、私のせいで余計な出費をすることになってしまったのではないかと思うと、ものすごく申し訳ない気持ちになってしまう。


そんな私の心の中を見透かしたように、篠宮さんは「もしかすると気にしてますか?」と表情を曇らせた。


「あの……」

「どうか気にしないで、使っていただけると嬉しいです」


そう言われてしまうと私も頷くことしか出来ず、ありがたく使わせていただくことにした。

せめて篠宮さんに喜んでいただけるような料理を頑張って作ろう。

そう、心に決めた――。

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