嘘は溺愛のはじまり
俺が、彼女に触れたくて仕方がないのは、きっと普段から気づかれているはずだ。
プロポーズしてからと言うもの、一緒にいる時は常にどこかに触れている。
手を繋いだり、髪を梳いたり、頬を撫でたり、触れるだけのキスをしたり……。
結麻さんが嫌がるならやめよう、と思いながら触れている。
けれども、嫌がるそぶりはなく、時には恥ずかしがりながらも嬉しそうに頬を緩めているから、きっと少しは触れ合うのを楽しんでくれているのだ、とは思っていた。
俺も健全な成人男性だから、好きな女性を前に、触れるだけでは足りないと思う時もある。
けれど……。
「本当に、俺のこと、怖くない……?」
「……はい」
「触れても、大丈夫……?」
さんざん触れておいて、今更の問いかけだが。
「はい、大丈夫です……」
「嫌だと思ったら、言って」
「……分かり、ました」
優しく、彼女の額に口づける。
彼女が、小さく息を吐くのが分かった。
緊張しているのだろうか。