嘘は溺愛のはじまり
「……っ!!」
恐ろしいシーンが続き、最初は頑張って画面をチラチラ見ていたけれど、とうとう無理になってしまい、思わず伊吹さんの肩に顔を伏せる。
伊吹さんは私の頭を優しく撫でながら「怖いね、でも俺がいるから大丈夫だよ」と声を掛けてくれるけれど……。
伊吹さんは、こんなに怖いのに、どうして平気で見ていられるんだろう。
音だけでもすでに、ものすごく怖い。
思わずギュッとしがみつくと、伊吹さんが少し音を小さくしてくれた。
「大丈夫、ほら、もう怖いの出てないよ」
耳元で囁いた伊吹さんは、そのまま私の耳にそっと口づける。
思わずピクリと肩を揺らすと、伊吹さんは私の耳元に唇を寄せたまま笑うのが聞こえた。
そして、その笑い声と息づかいに、私はまた身体を震わせてしまう。
テレビからは『キャー!!!』と叫ぶ声が聞こえていて、私は恐怖に身を縮こめる。
伊吹さんは「大丈夫だよ」と言いながら、再び私の耳に口づけた。
伊吹さんの唇が、だんだん下へと下がってきて首筋を食むように口づけられ、思わず身体が熱くなる。
テレビでは怖い場面が映し出されているはずで、怖いはず、なのに、私の息は場違いに弾んでいた。
「い、ぶき、さん……っ」
私の呼びかけに応じることなく、伊吹さんの唇は首筋から鎖骨のあたりまで移動する。
思わず、はぁ、と小さく息を吐くと、伊吹さんがクスリと笑うのが分かった。
はじめはソファに隣り合って座っていたはずなのに、私はいつの間にか仰向けに横になっていて……。
私を見下ろす伊吹さんの瞳が、熱い――。