嘘は溺愛のはじまり
――翌朝。
朝食の調理をしながら、今日の初出社に対する緊張をなんとか解そうと試みる。
秘書の方々の補助と言うことだから、必然的に役員の方々と顔を合わせることが多いだろうと容易に想像できる。
仕事内容も心配だけど、役員の方々を前に何かとんでもない粗相をしてしまうんじゃないかと、不安でいっぱいだ。
フライパンでベーコンエッグを焼きながら、隣の鍋で野菜スープを塩とコショウで味を調える。
ロールパンとサラダ、焼き上がったベーコンエッグをプレートに盛りつけ、野菜スープを添えたタイミングでコーヒーメーカーがドリップを終えた音が鳴り響いた。
うん、タイミングばっちり。
ダイニングテーブルに配膳し始めると、篠宮さんが寝室から出て来た。
「おはようございます、若月さん。良い匂いですね」
「お、おはようございます。朝食の用意、出来てます」
「うん、ありがとう。とても美味しそうです」
篠宮さんは既に身だしなみを整えていて、ワイシャツにスラックス姿だった。
そう言えば篠宮さんの主寝室には、専用の洗面とバスルームがあるって言ってたな。
バスルームが二つもあるなんて、豪華すぎるマンションだ。