嘘は溺愛のはじまり

篠宮さんとともに会社――篠宮商事のエントランスをくぐった私は、想像以上に大きなビルに恐れおののいている……。

普通の出勤時間より少し遅い時間とは言え、フレックスタイムでの出勤の人がいるのか、それなりの人数の人がゲートをくぐって行く。

篠宮さんを見とめた人たちから「専務、おはようございます」と声がかかる。

そして私はその横で小さくなりながら会釈をする、の繰り返し。

篠宮さんに挨拶をしていく人々は、隣に立つ私にちらりと視線を向けて、挨拶なり会釈なりをして去って行く。

“誰?”と言う疑問符を顔の端っこに貼り付けながら。

……会社で彼の横に立ってるのは本当に居たたまれない。


エントランス正面にある受付にはとっても美人な女性が二人座っていて、彼女たちは篠宮さんが近づくとすぐに綺麗な仕草で立ち上がった。


「篠宮専務、おはようございます」

「おはよう。これからお二人にもお世話になると思うので、紹介しておきます。彼女は今日から秘書課で勤務していただくことになった、若月結麻さんです」


篠宮さんの言葉の後に私が名乗って挨拶をすると、受付のお二人はにこやかに挨拶を返してくれた。

やっぱり“会社の顔”なだけはある。

二人ともあまりにも美人すぎて、同性の私でもドキドキしてしまうほどだ。

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