嘘は溺愛のはじまり
「……よかった。じゃあ早速明日、デートしよう」
「え、っと、」
「取引先の方からテーマパークの招待券をもらっていて。デートと言いながら、実際半分は仕事なのが少し申し訳ないんだけど……」
なるほど。半分仕事なのか。
伊吹さんは会社の専務という立場なわけだし、取引先の方に招待された以上は行かないわけにはいかないんだろう。
「分かりました、私で良ければお供させて下さい」
「良かった。あ、結麻さんは仕事だなんて思わずに、存分に楽しんでくれれば良いからね?」
そう言って優しく微笑む伊吹さんに、胸がキュンとなる。
デートなのか、仕事なのか……、私にとっても、半々……?
……いや、半々なんかじゃダメだ。
だって、伊吹さんのお母様を安心させるための嘘彼女を演じるための、言わばこれは私にとっても、“仕事”だ。
明日は私も、気持ちは仕事モードで頑張ろう。
決して、断じて、絶対に、伊吹さんにキュンとしたりしないように。
そう、決して――。