嘘は溺愛のはじまり
「寒くない?」
「はい、大丈夫です」
「夜はイルミネーションも綺麗らしいよ」
「そうなんですか? 楽しみです」
――こうして始まった“お仕事デート”。
仕事だと頭では思いながらも、伊吹さんのさり気ない気遣いやちょっとした仕草にさえドキッとしたりキュンとしたりして、やっぱりどうしても仕事だなんて思えてなくて……。
ずっと手を繋いだまま、って言うのも、ドキドキの原因で……。
結局、終始ドキドキきゅんきゅんしっぱなしだった。
「イルミネーション、観覧車から見ると綺麗らしいよ」
伊吹さんに手を引かれ。
帰る間際、最後の最後に乗った観覧車から見たイルミネーションは、私きっと、一生忘れないと思う。
心から好きな人と何かを共有できると言う経験を、私は人生で初めて経験した。
「ほんと、綺麗ですね……」
「……うん、そうだね」
二人きりのゴンドラの中、眼下には色とりどりの光が広がっていて――。
あまりの美しさと、伊吹さんと二人きりというシチュエーションに、なぜか熱いものが込み上げてきて……。
「……結麻さん?」