嘘は溺愛のはじまり
――お仕事デートの最後に観覧車で涙を流し続けた私に、伊吹さんは優しく声を掛けて、本当にとても優しく接してくれて。
繋いだ手を、決して離さないでいてくれて……。
逆にそれが私にはとてもつらくて、どうしようもなかった。
自分勝手だと分かっているから、ますます気持ちが落ち込む。
――でも、仕事に私情は持ち込まない。
そもそも秘書課でのこのお仕事は、カフェのマスターと伊吹さんにお世話していただいたお仕事だ。
紹介していただかなかったら、今頃私はその辺でのたれ死んでいたかも知れない。
デート翌日の月曜日。
私は初出社の日と同じぐらい気合いを入れて、仕事に臨んだ――。