嘘は溺愛のはじまり
それから二週間ほど経った、ある朝のこと――。
いつも通りの時間に起きて、お弁当を作って、朝食の用意をする。
伊吹さんが起きてきて、一緒に朝食を食べる。
同居を始めてからの、私の朝の日常――、今日もいつも通りの朝だ。
「では、行ってきます」
出勤するのは、いつも私の方が少しだけ先。
「あぁ、結麻さん。連日で申し訳ないですけど、今日も夕飯は必要ないです」
「分かりました」
「行ってらっしゃい。気を付けてね」
「はい、行ってきます」
――いつも通りの朝。
そして、今日もいつも通りの夜を迎え、一日を終える。
……はず、だった。
「結麻さん、ただいま」
帰宅した伊吹さんを玄関まで迎えに行くと、伊吹さんは優しい笑顔で佇んでいた。
「おかえりなさい」
伊吹さんの表情が、いつもよりずっと嬉しそうに微笑んでいるように見えるのは、気のせいだろうか。
いや、いつ見ても、とっても綺麗な顔なのには変わりはないのだけど。
「結麻さん、これ……」
そう言いながら、手にしていた大きな紙袋から取り出したものを、私へと差し出した。
それは、とても綺麗な花々で作られた花束で……。