何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。
そのままどれくらいの時間が経っただろう。
慌ただしく出入りするドクターや助産師の女性を見るたびに立ち上がっていた俺たちに、まるで"おまたせ"とでも言うかのように。
オギャアア!
と、甲高い産声が聞こえた。
思わず見合わせた顔。
「う、産まれた……!」
「あぁ。産まれたなぁ!」
隼輔とガバッと抱き合い、喜びを分かち合う。
そんなタイミングで、LDRと呼ばれる部屋のドアが開いた。
「おめでとうございます。元気な女の子ですよ」
助産師さんの柔らかな笑顔に頭を下げて、一目散に舞花の元へ向かう。
「舞花!」
「……隼也、隼輔」
「母さん!……この子が?」
「そうよ。あなたの妹よ」
「……可愛い」
ふにゃふにゃの手足は、すでに母親の温もりを求めるように全力でバタバタしていて。
目が開いていないその顔は、必死に母乳を求めるように眉間に皺を寄せて口を開いて泣いている。
そっとその手に自分の指をつけてみた。
ぎゅ、と。反射的に掴まれた指は、すごい力で締め付けられる。
「すげぇ……可愛いなあ」
こぼれ落ちた言葉に、舞花と隼輔が笑ったのがわかる。
でも、本当にすごいし、可愛いとしか言いようがない。
そこらで見る他所の子どもなんて全然なんとも思わないのに。
自分の子どもというだけで、どうしてこんなにも可愛く見えるのだろう。
必死に求めるその泣き声も、記憶の中の幼い隼輔の手よりも小さいその手足も。
全てが愛おしくて、可愛くて仕方ない。
思わずだらしなく垂れる目尻。
今俺の口角はゆるゆると上に向かっているに違いない。