何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。
「ねー……帰んの?」
「うん。もう遅いし」
「やだ。泊まってって」
「なんで……」
「無理。寂しい。俺を一人にしないで」
空いた手で目を擦りながら、子どもみたいに駄々をこねる隼也。
これ、絶対悪酔いしてるよね。やっぱ飲ませすぎたか。
隼也の手の力は強く、抜け出そうにもびくともしない。
むしろ、グイッと腕を引っ張られたかと思うと、そのまま隼也の上に乗っかるように倒れ込んだ。
「ちょっ……!なに、どうしたのっ」
服越しとは言え、初めて触れたその胸は見た目よりも筋肉質で、固い。
立ち上がろうにも、背中に隼也の腕が回ってきて、身動きが取れなくなってしまった。
「まいかぁ……行かないで」
「っ!」
甘えるような声に、私は困惑を隠せない。
こんなに弱っている隼也は、今までで初めてかもしれない。
一体どうしてしまったのだろう。私にこんなに甘えるなんて。
もしかしたら、私のことを汐音ちゃんと間違えているのかも。
だって、そうじゃなきゃおかしい。
そうじゃなきゃ、今抱きしめられている理由が、説明できないから。