何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。
それから数時間後。震える手を、ぎゅっと握りしめる帰り道。
まさか隼也に会うとは思わなかった私は、まだ心臓がバクバクと音を立てていた。
隼輔のお迎えがあるため、私は十七時にはあがらせてもらう契約だ。
自社ビルの真横にある、企業型の託児所に向かう。
そこは会社と契約しているためTOKIWAの社員の子どもたちが大勢預けられており、隼輔も入所させてもらっていた。
保育室にお迎えに行くと
「ママ!」
と元気良く私に向かって走ってくる。
「ただいま隼輔」
私を見つけると毎日抱きついてくる隼輔。この一瞬で、頭の中のもやもやなどどこかに吹き飛んでいく。
帰り支度をして託児所を出ると、そこから今住んでいる仮住まいの会社の寮に帰った。