何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。
数日後、隼也が佐久間商事からTOKIWAにやってきた。
先日の宣言通り、改めて挨拶に来た次第だそう。
副社長と共に応接室に向かうと、今日も爽やかに髪を後ろに流した隼也の姿が。
副社長の後ろから一礼すると、隼也も倣うように頭を下げた。
「わざわざおいでくださいまして、ありがとうございます」
「とんでもございません。副社長もお忙しいでしょうにお時間をいただいて申し訳ございません」
お茶を淹れて隼也と秘書の方の前に置くと、
「ありがとうございます」
と目を見て微笑まれる。
その笑顔に心臓が跳ねて、顔が真っ赤になりそうで恥ずかしくて下を向いた。
副社長にもお茶を出すと、私は応接室を出て給湯室へ戻る。
前回とは違い三十分ほど世間話も交えながら仕事の話をしたらしい二人は、そのまま昼食をご一緒にいかがですか、という話になったらしい。
「津田島さん、手配を」
「かしこまりました」
会社の近くにある和食の料亭を急遽抑えて、副社長の専属運転手に連絡をする。
「鷲尾専務、参りましょう」
「ありがとうございます」
二人の後ろを歩き、地下駐車場へ向かう。
その間に私のスマートフォンが着信を知らせた。