何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。
出ると託児所からのもので、隼輔が熱を出したと言う。
すぐに電話を切って秘書課の山瀬さんに連絡をした。
地下駐車場で隼也と副社長を乗せた車のドアを閉める前に、副社長にそっと声をかける。
「副社長、申し訳ございません。実は……」
耳打ちするように隼輔の件を伝えると、
「そうか、それは早く行ってあげなさい。こちらのことは気にしなくていいからね」
とすぐに了承してくれた。
「いつも申し訳ございません。ありがとうございます。午後の業務に関しては山瀬に一任しておりますので」
「了解。気を付けて帰るんだよ」
「はい、お先に失礼いたします」
副社長に頭を下げると、奥から隼也が
「……津田島さん、お帰りになるんですか?」
と心配そうに声を掛けてきた。