何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。



出ると託児所からのもので、隼輔が熱を出したと言う。


すぐに電話を切って秘書課の山瀬さんに連絡をした。


地下駐車場で隼也と副社長を乗せた車のドアを閉める前に、副社長にそっと声をかける。



「副社長、申し訳ございません。実は……」



耳打ちするように隼輔の件を伝えると、



「そうか、それは早く行ってあげなさい。こちらのことは気にしなくていいからね」



とすぐに了承してくれた。



「いつも申し訳ございません。ありがとうございます。午後の業務に関しては山瀬に一任しておりますので」


「了解。気を付けて帰るんだよ」


「はい、お先に失礼いたします」



副社長に頭を下げると、奥から隼也が



「……津田島さん、お帰りになるんですか?」



と心配そうに声を掛けてきた。

< 42 / 116 >

この作品をシェア

pagetop