何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。



「……この人はね、ママのお友達よ。ほら、もう一回寝ようね?」


「うん……」



まだ寝ぼけているのか、一緒に寝室に行くと隼輔は満足したかのようにすぐに眠りに落ちた。


恐る恐る隼也のいるリビングに戻ると。


何かを考え込んでいる顔の隼也。



「しゅ、隼也……?」


「ん?あぁ……。悪い。長居しすぎた。今日は帰るよ」


「う、うん。わかった」



思わず頷いた私に、隼也は少しだけ息を呑み込み。


連絡先を交換して、振り返る。



「……舞花」


「ん?」


「……また俺と会ってくれるよな?」



そんな言葉を残して、ゆっくりと頷いた私の頭をそっと撫でてから帰って行った。


< 53 / 116 >

この作品をシェア

pagetop