何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。
「舞花。……俺、三年前の金曜日のこと。ちゃんと覚えてるんだ」
「……え……?」
「あの時の子どもなんだろ?」
私を射抜くような、そんな視線に目を逸らすことができなくて。
覚えてる?あの日のことを?あんなに酔っていたのに?いつもなら、何も覚えていないのに……?
口を薄く開けるものの、言葉がうまく出てこない。
衝撃的すぎて、頭の中がぐちゃぐちゃだった。
そんな私を見かねて、隼也は小さく笑う。
「その反応見ると、間違いないみたいだな?」
昔から隼也をよく知っている。つまり、逆も然りで。
隼也は私の癖を嫌と言うほどよくわかっているのだろう。
「本当、動揺したら前髪触るところ、変わってねぇな」
無意識に触っていた前髪。隼也の言う通りなのが恥ずかしい。
行き場の無くなった手を降ろして膝の上で握りしめようとした時。隼也の手が私のそれをそっと包み込んだ。