何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。
「舞花」
「……」
「舞花の口から本当のことを聞きたい」
「……っ」
認めてしまったら。頷いてしまったら。
今までの幼馴染という関係は完全に消えて無くなってしまう。
あの日のことを覚えている時点でもうほとんどあってないようなものだけれど、認めてしまったらもう、後戻りはできない。
怒られたら?嫌がられたら?
勝手に産んだことを、責められてしまったら?
怖くて、恐ろしくて。
呼吸がだんだん速くなる。
「……舞花?」
今にも泣きそうな顔をしていたのだろうか。
隼也は驚いたように目を見開いたけれど。
「ご、ごめんっ……!」
「おい!舞花!」
手を振り解き、逃げるように車を降りて走り出そうとした。
しかし、そう簡単に逃げられるわけもなく。
「っ……待てって!」
「いや!離して!」
掴まれた腕を再び振り解こうとする私を、隼也は無理矢理引き寄せた。
「離すわけねぇだろ!もう二度とお前のことで後悔したくねぇんだよ!」
「っ……」
ビルの陰に入り込んだ身体。背中に回った手は力強くて、抜け出そうにもびくともしない。
「決めたんだよ。今度こそ、捕まえたら離さないって」
次第に抵抗をやめて、こぼれ落ちる涙を隠すように隼也の肩に顔を埋めた。